てとてと 千春 第一作品集
¥1,500 税込
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「てとてと」を読んで
月波 与生
ひとつずつ/ひとつずつしか/私は行動することができない/
今日は少し冒険をした(詩:忘れないように)
千春さんが『てとてと』を上梓されました。
川柳作家のくんじろうさんが描いた猫の顔の表紙がとても特徴的で、猫の瞳はじっと読み手を見つめていて、「ワタシを手に取って読むの?読まないの?」とつぶやいているようでもあります。
本に挿入された栞を書いたいなだ豆乃介さんが「本のタイトルの『てとてと』は飼っていた猫の名前で猫=千春」と書かれていますので、そのように解釈するとこの作品集は、千春さん自身のことを書いているといえます。
構成は「川柳ひげ」と「川柳しっぽ」の二章かからなり、間をブリッジするように「詩 短歌 おなか」が入る。冒頭の詩はこのおなかに収録されています。
大祐と々々さんに萌えてみる
あさってがふたりぼっちをもてあます
弟を忘れるために風邪うつす
母親の再婚相手おでんが響く
友人の自殺未遂に付き合って
「川柳 ひげ」から引いた五句。
大祐とは千春さんのパートナー川合大祐さんで、々々さんは柳本々々さんでしょうか。。萌えるという言葉が人間関係をよく表しています。あさっての句も大祐さんとのことを詠んだものでしょうか。萌えてばかりもいられないのがパートナーのツラいところ。弟の句、母の句、友人の句、いずれも実体験を詠んだ句だと読めます。句の背後に慟哭が聞こえそうですが既の所で川柳として作品として踏みとどまる。踏みとどまれるのは今のパートナーとの日常があるからでしょう。
逃げて逃げて耳たぶに鎮座した
ふくろうになった主治医の薬たち
フラッシュバック鏡をよく見せて
君の頭を撫で続けていて兵隊帽
恋しそうだから洗濯機にいれるね
「川柳 しっぽ」から引いた五句。逃げるところはどこにもなく、もしかしたらもう逃げなくてもいいのに逃げなくてはならない焦燥感が残っているような。鳥の中でも梟になったと思う処方薬。主治医との関係が伺われます。とはいえたびたび襲うフラッシュバック、鏡の自分は今誰になっているだろう。そんなときも一緒にいるパートナーの存在。撫で続ける兵隊帽があり、同じ洗濯機に入る日常がある世界、それがいまの現在地なのでしょう。
虚を書かないまっすぐな個性が見える作品集です。
ひとつずつ/ひとつずつ/忘れないように (詩:忘れないように)
(川柳の話通信1号より転載)
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